マドリッドから発信


by dias-madriz
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

Todo sobre la muerte de mi madre vol.4

vol1.へ
vol.2へ
vol.3へ

入国手続きを済ませ、すぐに自宅へ電話した。本当は電話したくなかった。電話口で母はもう亡くなったと聞くのが怖かったからだ。

まだ母はICUで頑張っていると聞き、安堵した。父に実家近くの駅まで車で迎えに来てもらい、病院へ直行した。

母がICUに入ってから丸2日経っていた。母はまだ生きている。もしかしたら回復するかもしれない。そんな希望を抱き、私は車の中で祈り続けた。


4月4日(日)朝9時半ICU到着。


ドラマや映画で見覚えのあるICUの様子。入室する時、手でドアに触れてはいけない。ICU入室後に手洗い、消毒、そしてマスクを着用する。

ベッドに横たわっている母を見た瞬間、現実に直面した私は言葉を失った。今まで抱いていたかすかな希望が音を立てて崩れていった。

自分で呼吸が出来なくなった母の体には無数の管がつながれていた。脳のむくみを取るための点滴やら、素人では分からないたくさんの機械に囲まれ、つながれている母。


「madrizが帰ってきたんだよ。聞こえるか?○○(母の名前)、頑張れよ!」


父が一生懸命語りかける。


「お母さん!お母さん!聞こえる?帰ってきたよ!遅くなってごめんね、ごめんね。」


一生懸命呼びかけてみたが、反応はまったくない。全然動かない。ピクリともしない。泣きじゃくりながら、母の手を握りながら、何回も何回も何回も呼びかけた。

それでも母は目を開けない。何の反応もない。もう、どうしたらいいんだろう。パニックに陥った。


そんな時、ICU担当の看護士(男性)さんが挨拶に来てくれた。

「娘さんですね。間に合って良かったね。お母さん、頑張っているよ。」


母が危篤状態になった2日前、駆けつけた親戚たちが手を握りながら、「madrizがもうすぐ帰ってくるから、頑張れ!もうすぐ会えるよ!」と声をかけると、母は薄目を開けて涙を少し流しながら手を握り返してくれたらしい。

口の悪い叔父(母の弟。でもホントは優しい人)に言わせると、脳梗塞の人はよく涙を流すもんだし、体の反応があるってのは機械につながれているからだと言う。


オイ!叔父さん!人間ってのはこーいう状況下で、いちるの望みを託したいもんなんだよ。そんなヒドイこと言うなよ!


泣きじゃくる私の横で看護士さんが言った。

「昨日までは手足を強く押すと反応してくれたんだよね。ただ、いくら意識がないとは言え、お母さんに痛い思いをさせちゃうみたいで、あんまり押すのもねえ。可哀想だし。」


体中管だらけで意識も全くない、ピクリとも動かない母の顔を綺麗に拭いてくれたり、歯を磨いてくれたり、ちょっと熱が高いと言ってはすぐに氷枕を用意してくれたり、何かする度に「○○(母の名前)さーん、今からちょっと体を動かしますよー。」って声をかけてくれる。


その看護士さんの優しい対応に私は少し救われた。


その後、担当医が母の容態を詳しく分かりやすく説明してくれた。残念ながら母の脳はすでに半分以上が脳死状態になっているとのことだった。

1%の可能性もないが、仮に脳が回復したとしても意識は戻らない。つまり植物状態になるという。

植物状態というのは、意識がなくても脳も体も生きている。機械につながれなくても自分で呼吸ができるのだ。

でも脳の大半が脳死状態になっていて、機械を外せば呼吸が止まってしまう母に脳の回復を期待するのはあまりにも非現実的だった。


それでも母はまだ生きている。担当医は2日前、「娘さんは臨終に間に合わない」と父に告げた。それでも母は頑張っている。安置室ではなく病室で私を待っていてくれた母に感謝した。


少し落ち着いた私は、例の優しい看護士さんと話し始めた。


「この状態で脳が回復し、植物状態になるとは思えません。機械で生かされている母が可哀想。」


可哀想とは言いつつも、100%脳死状態でない母の機械のスイッチを切れるのか?とふと思った。

そもそも本人の意思が分からない場合、尊厳死ってのは周りが判断していいものなのだろうか?楽にしてあげたいって言うのは周囲の勝手な解釈、自己満足に過ぎないのではないか?でも、母が苦しんでいたらどうする?でも、意識がないから苦しんでいない?そもそも日本には尊厳死なんて存在しないはず…。


「そうだね。確かにお母さんは機械を外したら呼吸できなくなっちゃうね。それでも頑張っている。でも本当は何が患者さんにとって幸せなんだろうね…。」


表面的に優しいだけではなく、きちんと自分の意見が言える看護士さんだった。


一睡もせずにスペインから病院へ直行した私の思考回路はグチャグチャになっていた。それでもやっぱり願っていた。お母さん、お願いだから意識を取り戻して。話せなくてもいいから、せめて私の手を握り返して。


vol.1へ
vol.2へ
vol.3へ
vol.5へ
[PR]
トラックバックURL : http://madriz.exblog.jp/tb/13238406
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by dias-madriz | 2010-04-04 06:30 | Familia | Trackback